7月に読んだ本をいくつかご紹介します。
なんだかんだ雨も多い日が続き、中々読書が捗ったように思います。
映画やYouTube等の動画は早送りして観ちゃうのに、未だ本をゆっくり読む人間ってなんなんでしょうね。
今回は一部、書籍の内容に言及している部分があるため、苦手な方はご遠慮ください。
無理ゲー社会【橘玲】
題名からして、それな。って感じですね。
厳つい題名もさる事ながら、内容も現実を突きつけてくる。
これからは自己責任を重視される世の中ですが、やりたいことが出来ない人はどうするのか?
やりたいことをやれ!って一寸先は闇。
また、貧困について、著者は、シングルマザーと失業男性、高齢の失業者等は分けて考えるべきだと述べています。
運悪くシングルマザー(ここでは父子家庭も含む)となってしまった方と比べ、確かに”貧困”と一括りに言えない現実がある。
(多くの場合)長期に失業しているの場合、学歴や資格、才能等の市場価値で判断されることが多くなることが、再雇用の差に現れていると考察しています。生活保護と切り離した支援がなければ貧困率の改善に繋がらないであろうと。
個人的には結婚率についての言及は疑問が残りました。男性の年収と結婚率の関係をグラフを用いて考察されていましたが、年収が少ない程結婚率は下がるというものです。確かに女性が自立し男性が選ばれる側になったであろうことは理解できますが、将来、完璧な環境・支援、潤沢な資金が整えば若者は再度結婚・子育てを嬉々としてするのか。もはや分かりません。
進歩なのか後退なのか、とにかく進んでいく社会は不可逆です。
個を尊重するリベラルな動きは、著者の言う、家族や恋人を含む”愛情空間”にも影響を与えているのだろうと思いました。
消滅世界【村田沙耶香】
一言で表すならば、
「今からう○こしてくるね!」って毎回言ってトイレ行っているような世界線。しかも場所も個室も明言して。
決してディスではありません。
家族の概念が変わり、性欲が排泄するものになった。
家族と恋愛が完全に切り離され、それは夫婦間であろうと性対象ではない。愛を切り分けて考える、どこか古代ギリシャ的な愛の捉え方。
そして、作品中でも現代と同じように価値観が変化していく。
人はどこかで性愛、感情をコントロールできると思っている傲慢さを感じました。
作中で主人公が、心の拠り所=家族=宗教と捉えてい、何かの存在を信じたり、特定の考え、思考に至る全てが一種の信仰だなと共感できる部分があります。自分が”正しい”と感じている価値観は宗教。ハロウィンやクリスマス等様々なイベントを楽しんだり、初詣に行ったりと同様に多神教的な考え方だと感じました。
皆、生きている時代や環境に影響され価値観・信念みたいなものが形成される一方で、どこに身をおいても周囲の影響を受け”正常”になる。
読後は、性愛とは?愛情とは?家族とは?常識とは?”正しさ”ってなんだ?全てが疑問になります。
認識している本能と感情や価値観に矛盾ありまくりの狂った世界ですが、ある意味では前向きであり、ユートピアであり、人間臭さ全開の作品でした。
同著者の作品「生命式」でも同じような世界観です。
もう少し心穏やかに、救いがある作品となっています。
こちらの作品は短編集ですが、「生命式」・「素敵な素材」におけるご遺体の扱いについては、感染症等の理由で現実的ではないにしても、儀式としては原点回帰的で面白いですね。
そもそも火葬は、土葬は土地が必要になること、公衆衛生の観点から推奨されるようになりました。
近年は骨粉等を思い出の品として身につけることもあるようなので、飛躍しすぎですが、儀式的に身につける人は増えるのかもしれません。
正欲【朝井リョウ】
”多様性”って口にする全ての人をぶん殴ってくる作品です。
特に最近考えることが多くなったので、もうボコボコです。
暴力的にまとめると、対物性愛の話です。
”望ましい”性愛でなければ正しくないのか、本人がそのことに苦しんでいると正しくないのか…
私には無い苦悩が逆に苦しくて、この世界を多角的に見られていない自分が恥ずかしくなりました。
こちら、ネタバレなしで読むことをお勧めするので、多くを語らず、とします。
スモールワールズ【一穂ミチ】
1つ目の話がキツかった…結婚や恋愛の問題ってどこか理解できるから無性に腹立たしいんですよね。生き地獄。
まあ、キツかったと言っても小説好きの方であれば好きだと思います。あの鬱々とした気持ち。
なんで暗い気持ちになりたくなるんでしょうか?
日常の些細で重大な出来事が集まった短編集なのですが、繋がりを示唆する部分も。これぞ短編の醍醐味!
暗くなったり、そわそわしたり、優しい気持ちになったり。様々な感情を体験できる作品です。
シャーデンフロイデ 他人を引きづり下ろす快感【中野信子】
嫉妬は本能と聞きますが、人間の本能について知りたくて手に取りました。
著者の作品はどれも読みやすいとの評判でしたので、著者の作品縛りで探していました。
”シャーデンフロイデ”、最近は聞いたことある方も多いと思いますが、”他人の不幸は蜜の味”ってやつです。
炎上なんてまさにそれですね。叩きまくって問題と関係なくとも得をした人、恵まれた人を貶める。ざまみろって。
一方で、協調性の高い人や愛の強い人が不寛容な社会を形成している。正義を守りたい一心で。
このことを知るだけでも、自分の行動を省みたり、心無い言葉の本質に気づくことができます。
本質的には優しい人で溢れているはずなのに。
様々な感情の動きについて、有名な実験を具体例としてあげながら簡潔に説明されています。
とても読みやすく、専門用語もかなり分かりやすく解説されています。
漫画 人間とは何か?【マーク・トウェイン】
著者が生きた当時では、人間への冒涜だ!と言われるでしょうが、現代の私たちが読むとさほど衝撃はありません。脳から発せられる物質や両親からの遺伝、環境等の外的影響によって行動する人間を機械的だと考えることになんら不思議はないと思います。
本書は、様々なことに理由を考えてしまう人間にとって、一種の諦めを提案してくれる、人生を楽にしてくれる気がします。
こんなことを語ってくれる師がいるなんて羨ましい…と思いました。笑
人間は無意識に差別していると言いますが、人間以外の生物を見下してしまいます。
この世界を作っているなんて傲。
マヤ・ルンデ著「蜜蜂」でも、虫がいなくなった世界が壊滅的なことが分かります。
快適に暮らすために虫を排除している私たちは、”棲み分け”なんて便利なこと言ってます。
マヤ・ルンデ著「蜜蜂」については、下記の記事で紹介しています。
生きていく民俗 生業の推移【宮本常一】
建築学生風に言うと、コンテクストを知るでしょうか。
一次産業の推移とか社会科の授業で見たことありますよね?
数値だけではなく、もっと網羅的に土地による職業の変化などを知りたいと思い手に取りました。
パートナーとドライブ中、小さな山に囲われた漁村はどう生活していたのだろうか?との話題になりました。
漠然と想像はつきますが、この見るからに不便そうな土地はどうやって脈々と受け継がれてきたのか?と。
読めば、旅先での知らない町や自分達の隣町の歴史や風俗が想像できるようになるかもしれません。
ゴールデンカムイ【野田サトル】
ついに完結してしまいました。形は違えど皆救われた…と思っています。
ギャグ要素強めの漫画はあまり読んでこなかったのですが、登場人物が魅力的すぎる。アシリパちゃん可愛い。
敵キャラ(安易に敵とは言えませんが)のバックボーンが少しずつ明かされると盛り上がりますよね!
バディものバトル漫画、歴史やグルメ、民俗学的な部分等、様々な要素がモリモリの漫画でした。
アニメからやってきたのですが、終始、日本史をもっと知っていればより楽しめたのに…と後悔。
大人になると勉強していない後悔をする一方で勉強するかと言われるとそうでもない。
昨年からアニメから漫画で追いついてので、1年程度楽しんだのですが、連載期間は8年。
リアルタイムで追っていたファンの方、お疲れ様です。
私は主に楽天ブックス・楽天koboで書籍を購入しています。以下からお気に入りをcheck!