危険なUIJターン【田舎移住は冷静に】

移住して後悔しました。

過疎地域出身、多少なりともアイデンティティを持っている私としては、そんな感想はあまり聞きたくないものです。
それでも昨今、移住最高!て大手を振って言うことができない。

どこの自治体も人口増加、移住者増加を政策に掲げています。しかし、何か大変革が起こらない限りこれから人口増の見込みはなく、移住者も絶対数が増加することはありません。企業においても、町単位においても人手の取り合い状態のこの現代で、何を選択すべきか。

やっぱり住みたい場所に住む幸福は何にも変え難いものがあります。

自力で生きることが求められる時代において、新たなチャレンジにおけるデメリットを、しっかり把握しておく必要があります。

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目次

悩める都会暮らし

なぜ、鳥取県に移住したか。理由は単純で、地元だからです。

家族や愛犬との別れ、パートナーとの未来、生活スタイルを変えたい…キッカケは大きくなくても、都会に住んでいることの違和感を感じる場面が多くなっていきました。

1人で生きていける時代でも、美味しいもの、楽しい体験、悩み事を誰かと共有したいと思うのが人間なのでしょうか?
SNSで共有しても満たされないもの、この漠然とした感情を埋めてくれる存在が、私にとっては家族やパートナーだったのでしょう。

数年経てば、もっとバリバリ仕事して地元でのプロジェクトなんかも遂行できたかもしれません。
でもその数年っていつ?キャリア形成してその後の未来は?最終的な目標は?私ってそんな才能ない凡人だし。
多くの20代前後の方は理解できるかと思いますが、仕事において出世志向はなく、淡々とこなしている状態がベストだと考えています。
”たりたいこと”を見つける、”夢”をもつ、という考え方自体が重荷になっている時代。

もはや自分にしかできない仕事なんてない。誰にでもできない仕事なんて、iPhone作ったり、テスラ作ったり?

リベラルな社会で生きるって難しい。だからこそ、小さくていいから自分でできることをできるだけ楽しくして暮らしたいですよね。

現時点では、移住してよかったと感じています。

「田園回帰」は本当か?

本ページでは、農山漁村地域(過疎地域の有無は関係なく都市部から離れた自然豊かな地域)を”田舎”と言っています。

近年は、若者のUIJターンが盛んになり、いわゆる「田園回帰」傾向にあるといわれています。
たしかに、田舎ってダサいよね、と言う空気感は薄れてきたのではないでしょうか?
都会から”脱出した”人、と言うイメージがある方も多いのではないでしょうか?
田舎暮らしに憧れる傾向が高まっている、果たして本当にそうなのでしょうか?

一例としてここで、国勢調査やアンケートを用いて分析した、総務省の『「田園回帰」に関する調査研究』から、移住の実態をみてみましょう。
詳しい調査対象者や参考資料については、下記報告書をご確認ください。
以下、報告書の一部を抜粋して記載しています。

「田園回帰」に関する調査研究報告書(平成30年3月)

総務省ウェブサイト(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei10_02000053.html)

平成12年・22年・27年の国勢調査から、全国でみたときの都市部から転出した移住者の総数に占める過疎地域への移住者の割合は大きく変化していません。しかし、皆さんもお気づきの通り、そもそも社会移動のコア層である若年層の人口減少も要因として考えられると言及されています。

都市部から過疎地域への移住者数の推移等
出典:(図3)「田園回帰」に関する調査研究報告書 平成30年3月(総務省)

一方で、過疎地域において、都市部からの移住者数が増加している区域は拡大しています。

H12とH22国勢調査を比べて移住者が増加している区域
H22とH27国勢調査を比べて移住者が増加している区域

過疎地域の区域における都市部からの移住者数の増減
出典:(図17・図18)「田園回帰」に関する調査研究報告書 平成30年3月(総務省)

移動している割合はあまり変化がないが、過疎地域へ移住している人は増えている。というのが現状です。
さらに、人口規模の小さい区域の方が移住者が増加している区域数の割合が高く、また、離島等の条件不利地域に該当する過疎地域の移住者が増加している区域も割合は増えているようです。

どうやら「田園回帰」は本当のようです。

移住の動機

同調査研究における「過疎地域への移住者に対するアンケート調査」の結果について、過疎地域への転居に際して、「地域の魅力や農山漁村地域(田舎暮らし)への関心が、転居の動機となったり、地域の選択に影響した」と回答した人は全体の約3割(27.4%)となっています。主な動機としては、以下のような動機があげられています。

  • 「気候や自然環境に恵まれたところで暮らしたいと思ったから」(47.4%)
  • 「それまでの働き方や暮らし方を変えたかったから」(30.3%)
  • 「都会の喧騒を離れて静かなところで暮らしたかったから」(27.4%)

一方で、都市部からの移住者に限ると、この割合が約4割に上昇しますが、必ずしも地域に魅力を感じてい選択している訳ではないこともうかがえす。

転居したタイミングで最も多かったのは「結婚・離婚」、次いで「転職・転業」となっていることから、ライフイベントが決め手になることが大きいようです。

十人十色、様々なきっかけ・目的があるとは思いますが、以下のような要因も考えられます。

  • 生活費の削減を目的として
  • ビジネスにおける立地条件があった
  • 災害時における都市の脆弱性を懸念して 等

移住における不安

同調査研究において、都市部に住む方々の潜在的なニーズを把握するため、アンケート調査が実施されています。
全体で、農山漁村地域に移住してみたいと回答した割合は、

  • 「農山漁村地域に移住する予定がある」(0.8%)
  • 「いずれは(ゆくゆくは)農山漁村地域に移住したいと思う」(5.4%)
  • 「条件が合えば農山漁村地域に移住してみてもよいと思う」(24.4%)

田舎に住みたいと考えている方は、上記を合わせ全体で約3割(30.6%)との結果です。

また、移住するうえで生活を維持できるよう、働き口を確保できることが絶対条件となります。

アンケート結果から、最も重要視する条件として「生活が維持できる仕事(収入)があること」、自治体の施策においては「仕事の紹介」を求める回答が多いことが分かります。
やはり、仕事があるのか?と言う不安が最も大きいと考えられます

自由を求めて

生活を維持したい反面、忙しい毎日の中で都会の生活や生き方に疑問を持ち、環境を変え、自己実現の機会を創出したい。と思うのは田舎移住を検討している人だけではないでしょう。

「豊かさ」に関する意識の推移
出典:国土の長期展望専門委員会(第14回)配付資料
資料1 豊かな暮らしの実現について(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001397297.pdf)

国土の長期展望専門委員会

国土交通省ウェブサイト 国土の長期展望専門委員会(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s104_choukitennbou01.html)

田舎は時間がゆっくり流れているような錯覚に襲われます。慌ただしい都会から離れて自然の中で暮らせば全てがうまくいくのでは?
と、移住した現在も私はどこかで幻想を抱いている気がします。

ともあれ、移住する・しないに関わらず、田舎に魅力を感じている人の割合は増えているようです。

今思えば、田園回帰として、自然の中での子育て、アウトドアの趣味を楽しむ方が増えたことと、コロナ禍によるキャンプブーム・テレワークは、とても親和性が高かったのでしょう。コロナ禍が後押しした感じでしょうか。過疎地域への移住までは行かなくとも、郊外での暮らしを前向きに考える方は多くなったのではないでしょうか。
もっと早く気づけば一儲けできたのに…残念。

田園回帰は前向きなことと捉えられますが、日本の将来を考えると、移住の是非が問われるところです。
次は、田舎移住の負の面を確認していきます。

田舎移住のデメリット

マクロなデメリット【自治体の将来】

集落の消滅?人が住まない場所が増加

少子高齢化が進行する現在。人口減少が如実に現れてきました。

2050年、全国に多くの消滅集落ができる可能性があります。全国の居住地域の約半数で人口が50%以上減少し、国土の約2割が無居住化すると予測されています。

2050年までに無居住化する地点
出典:「国土のグランドデザイン2050」 参考資料(平成26年7月4日)国土政策局

公表資料の中で無居住化状況の分かりやすい上記の図を使用しました。
最新の(1kmメッシュ別将来推計人口(H30国政局推計))のメッシュ図は下記から確認できます。
GISホームページ https://nlftp.mlit.go.jp/index.html

小さな集落の中で、小さく暮らしていけばいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、人口の減少は集落内の相互扶助機能等にも影響を及ぼします。

「令和元年 過疎地域における集落の状況に関する状況把握調査」において、集落の機能低下状況は前回調査と比較し、機能低下している集落数の割合は増加しています。維持困難な集落数の割合は大きく変化はないが、機能低下している集落数の割合が増加していることから、今後増えることは予想されます。
人口が少なくなればなるほど一人当たりの負担が大きくなり、徐々に機能しなくなることは容易に想像がつきます。
原野のように荒れた土地の中で細々暮らすなんて、憧れていた田舎暮らしとは程遠いでしょう。

地方ブロック別・集落機能の維持状況別 集落数
出典:過疎地域における集落の状況に関する現況把握調査最終報告概要版(令和2年3月)

過疎地域における集落の状況に関する現況把握調査最終報告(令和2年3月)総務省 地域力創造グループ 過疎対策室

国土交通省ウェブサイト 令和元年度 過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査(総務省、国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudokeikaku_tk3_000010.html)

この時代をいつまで生きるのでしょうか?

「令和3年簡易生命表」より、平均寿命は男性81.47歳、女性は87.57歳。

女性の平均寿命で考えると、私はあと約60年程度生きることになります。
2050年時点で私は50代後半、まだまだ元気でしょう。元気なことが不安になる日が来るとは思いませんでした。笑

おばあちゃんになった私が居住する(可能性のある)この自治体も、とても小さなコミュニティになっているのでしょうか?

令和3年簡易生命表は、日本における日本人について、令和3年1月から 12 月の1年間 の死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、 平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標によって 表したものである。(以下略)

厚生労働省ウェブサイト 令和3年簡易生命表の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html)
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life18-01.pdf)

地方の血管【インフラというネットワーク】

人口が減っていくに従って、公共サービスは徐々に縮小されます。公共施設も集約・縮小・廃止されていきます。自分が従事している職業が上り調子であったとしても、電気・ガス・水道等のインフラが停止されては、暮らしていくことは難しいでしょう。
集落機能どころか、ライフラインが断絶されてはほとんどサバイバル状態です。

集落を救う?方策として「第2次国土形成計画(全国計画)」において、対流促進型国土を形成するため「コンパクト+ネットワーク」の考え方を基礎に、生活サービス機能等を集約した「小さな拠点」を始めとする多層的な地域構造を構築することをあげている。
また、その周りの更に小さな集落への交通手段の確保、土地利用の地域での話し合いの重要性等を述べている。
居住機能の集約化までを本来的な目的とはしていないですが、コンパクトシティとする方針はこれまでどおりです。

国土構造、地域構造:重層的かつ強靱な「コンパクト+ネットワーク」図
出典:第2次国土形成計画(全国計画)リーフレット(https://www.mlit.go.jp/common/001109414.pdf)

第2次国土形成計画(全国計画)(平成27年8月)

国土交通省ウェブサイト(平成27年8月(https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudokeikaku_fr3_000003.html)

離島等の条件不利地域等の特殊な環境を除き、道路等のインフラを整備することは、移動の高速化によるネットワークの強化が期待できます。道路を整備することは田舎を生きながらえさせる一つの方法と言えます。
一方で必ず空洞となる地域が存在します。よって、前述した無居住化地点が必ず発生するということです。
消えてしまう田舎は内部の活動を活発にしても避けられないと考えられます。

また、そのインフラの老朽化も問題になります。道路においては2033年に約63%が建設後50年以上経過しており、更新の時期が来ています。無尽蔵に片っ端から更新するわけではなく、メンテナンスには優先順位が着くでしょう。過疎地域は?…

社会資本の老朽化 建設後50年以上経過する施設
出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ 参考資料(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001365995.pdf)

物理的なネットワークではなく、情報通信の高速化が推進されています。
医療面等、地方が恩恵をうける技術は確立されるでしょうが、情報格差はさらに進むのではないでしょうか?
今や情報は能動的に収集しなければならないものです。高速になるほど受取側の速度が落ちるとズレが生じることも考えられます。
高齢になった段階で臨機応変に対応できるかは、多くの人が不安に感じる部分ではないでしょうか。

国の方針が居住地の集約化までは行われないにしろ、移住は人の分散が物理的に起こっているため、都市のコンパクト化に逆行しているように感じられます。
数人が住んだままになるより、完全に消滅してしまった方が合理的に思えます。(そう望んでるわけではありません。)
まだ自治体の存続を諦めるのは時期尚早ですが、いずれ必ず訪れる事態に備える必要があります。

次は、ミクロな視点でのデメリットをあげていきます。

一概に全ての過疎地域に当てはまるわけではありませんが、一般的なデメリットをまとめてみました。

コミュニティ【都会の喧騒 VS 濃ゆい人間関係?】

人が少ないから都会の喧騒から逃れられるのか?

人口密度は低くなるので、喧騒という意味では脱出成功です。

”地方独特の濃ゆい人間関係”なんて言いますが、全ての田舎に当てはまる訳ではありません。

しかし、小さな集落は特に注意しましょう。移住者が多いのであれば、比較的安心かもしれません。
親切な”お節介”を受け入れる必要はあります。時には若いからという理由で仕事を与えられます。
必要以上に世間話をしてきたり、作物のお裾分けをいただくこともあるでしょう。

地方を盛り上げる、は幻想な場合がほとんどです。長年住んでいる人々はそのままでよいのです。
「明日から水、電気止まるよ」くらい言われないと危機感を感じないでしょう。

変わってこなかった土地へのアイデンティティがあるはずです。私ですら地元に対してそういった思いがあります。
都市部では変わり続けることへの耐性が出来上がっている状態です。全てが流動的で、明日にはお隣に住んでいる人が変わっている場合も、それすら気づかないことも多いでしょう。
突然自分の家に土足で入ってこられた気分、変化への不安。受け入れる側も不安なんです。好きなアイドルを親世代が小馬鹿にする感覚とも似ているかもしれません。
年齢を重ねると、新しい変化に対応しづらくなります。高齢化の進んだ日本らいし理由かもしれません。

日本で移民受け入れが進まないことも同様の理由があると考えられます。
同じ日本人ですら地域の外から来れば、”移民”なのです。

個人的には新しい住民が増えることは嬉しいと思います。ファンが増えた感覚です。
しかし、コアな文化が、マイナーなカルチャーがメジャーになるように、選ばれる総数が増えるほど希少性みたいなものが失われる感覚もあります。あるきっかけで急に観光地になる場所があるように、時には治安が悪くなる可能性も考えてしまいます。

必要以上のお節介やお裾分けは、最大限の優しさで返せば良いのではないでしょうか?
必要以上と思っているのは本人だけかもしれません。親切を返されて気分が悪い人間なんて稀でしょう。
”郷に入っては郷に従え”ではないですが、都合の良い部分だけをみて田舎を選んだ責任を取ることが望ましいのではないでしょうか?
時には住んでみなければ見えな事態も多くあります。コミュニティにおける不安が大きい場合は、あらかじめ自治体職員に雰囲気を聞いてみる等リサーチが必要でしょう。

住む場所という境界が曖昧なので見失いがちですが、会社も友達関係も問題が起きれば、転職したり、話し合ったり、時には距離を取って解決します。自分で選べる転職時代になったのに住む場所は柔軟にならないのでしょうか?
ハードルは桁違いなのでかなり難しいとは思いますが、本当に嫌であれば引っ越すのみです。

ビジネス【企業を選んで就職できるのか?】

田舎に移住したらどんな職業に就きたいですか?

農業や漁業といった一次産業に携わりたい!
自分の条件に合う企業に就職したい!
新しくゲストハウスやカフェでも始めたい!

今はどこでも働けるじゃん?

人が少ないことイコール、優秀な人材が集まりにくい・流出しやすく・企業も少ないです。
田舎に住むことで、ビジネスチャンスとなる人・企業に出会える場を失っている可能性は往々にしてあります。

皮肉なことに、コロナ禍を契機にテレワークの推進が加速しました。
「令和3年版情報ビジネス白書」より、テレワーク推進率を見てみましょう。
関東地域は突出している一方で、中四国・九州地域では関東の3分の1程度となっています。

地域別・テレワーク実施率
出典:「令和3年版情報通信白書」(総務省)
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n2300000.pdf)licensed under CC BY 4.0

どこでも働けるようになった一方で、地域特性における職種・企業のDX推進の有無の差が顕著に感じられるはずです。
転職を前提とした移住では、企業選びが限られてくる可能性が大いになります。
テレワークに限らず、自分の条件をある程度諦める必要があることは覚悟しておくべきかもしれません。

業種別・テレワーク実施率
出典:「令和3年版情報通信白書」(総務省)
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n2300000.pdf)licensed under CC BY 4.0

上記の図において、テレワーク実施率が低い業種が田舎に多いことは想像に難くないでしょう。
移住する前は各自治体の産業構造を確認しておくと参考になるかもしれません。
ちなみに、鳥取県の産業構造は以下の通りです。なお、最新版を確認したい場合は鳥取県HPをご覧ください。

鳥取県の産業構造 企業数(企業単位)
出典:「RESAS(地域経済分析システム)-人口構成-」
(https://resas.go.jp/industry-all/#/map/31/31202/2016/1/2/1/-) (令和4年8月17日に利用)
鳥取県の産業構造 従業者数(企業単位)
出典:「RESAS(地域経済分析システム)-人口構成-」
(https://resas.go.jp/industry-all/#/map/31/31202/2016/1/2/1/-) (令和4年8月17日に利用)

新しくビジネスを始める方にとっては、まだ開拓されていないビジネスが多くあるのかもしれません。
一方で、これは体感ですが、流行り物が淘汰されるスピードが速い、かつ、都心の流行が遅れてやってくるように思います。
人口が少ないことで商圏として十分でないことが大きな壁だと考えます。

古民家の幻想【空き家はたくさんあるけれど…】

その物件大丈夫?

古民家DIYが盛り上がって数年、物価上昇も相まって、空き家購入する方も多いかと思います。
特に田舎の空き家率は順調に上昇し、山間部等、田舎であればあるほど安価な物件が転がっています。
一方で空いているのに売れない・売らない物件、既にリホーム済みの物件等の残念な物件も多い印象です。

古民家のみならず、古い物件を購入する際、リノベ費用・維持管理費が莫大にならないか、お子さんがいらっしゃる場合は特に、今後数十年住んでも問題ないかを検討する必要があります。

立地によるデメリットを許容できる?

移住を検討している方であればある程度覚悟されていると思いますが、住んでみると想像以上に不便を感じる場面があるでしょう。
コンビニやスーパーまで車でしか行けない、通学通勤にも時間がかかる、豪雪地帯舐めてた…等
そして、何にもないことをよしと思えるか

刺激的な毎日は存在しません。初めのうちは都会との違いを新鮮に感じるかもしれませんが、都会の変化におけるスピードに勝る刺激は田舎にはないでしょう。

先にも述べたように、立地にこだわらなければ物件はあるでしょう。しかし利便性の面に限らないデメリットも存在します。
海沿いであれば水害、塩害、山側であれば土砂災害、害虫被害が主な被害でしょうか。
新しそうな家でも海岸沿いでは外壁への塩害が散見されます。素材選びでは限界があるのは確かです。
山間部は…単純に虫嫌いには厳しいものがあります。

生活費【田舎は生活費が下がる、かもしれない。江戸時代生活】

多くの場合、車必須の生活が待っています。イニシャルコストはもちろん、賃貸であれば駐車場代、ガソリン代、車検代等のランニングコストがかかります。車種によって金額は様々でしょう。

生活費を下げることも目的の場合は軽自動車という選択肢が待っています。
うーん。所有の負担等考えるとドライブ好きでない人は都会の方がおすすめです。

一方で、生活費が下がる可能性は確かにあります。車の問題を解決できるのであれば問題なく下がります。
衣食住に係る費用を見直す契機になることはもちろん、圧倒的に家賃が安いです。

徹底してネットショップで買い物をし、徒歩・自転車県内で働き、生活圏内を狭くすれば更に節約できます。ほぼ江戸時代。

ネットショッピングの良さは、セールやポイントを貯められることによるお得感です。その点で言えば離島料金のかかるエリアは避けるべきかもしれません。輸送までに時間がかかる場合もありますので、とことん節約したい人は確認しておきましょう。

アメリカのある田舎ではNYより二酸化炭素排出量が多いという資料があるようです。日本でも都会だから一人当たりの二酸化炭素排出量が多いわけではないことがわかります。
暮らしの中でのカーボンニュートラルな生活については「国立研究開発法人国立環境研究所」の資料が参考になりそうなので、気になる方はご覧ください。

Uターンしてみた【移住者からみる鳥取県】

やっぱり”何にもない”

ご存じの通り、都道府県の中で最も人口の少ない”過疎大国”鳥取県。
人口は鳥取県54.4539万人(令和4年7月1日現在)、鳥取市18.3715万人(令和4年7月31日現在)

疎開先として選ばれていらくらいですから、戦前から生粋の田舎なのです。笑

人が多いというストレスとは無縁の生活になることは保証しましょう。

鳥取県の過疎分布図
出典:過疎関係市町村都道府県別分布図(https://www.soumu.go.jp/main_content/000807380.pdf)

過疎関係市町村都道府県別分布図(令和4年4月)総務省自治行政局過疎対策室

総務省ウェブサイト(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/2001/kaso/kasomain0.htm)

鳥取県に住めばつまらないことは多いと思います。

いわゆるショッピングモールや動物園等娯楽施設が充実していませんし、鳥取県最大の観光地は言わずもがな「鳥取砂丘」ですが、自然以外に紹介することがなかなか難しいです。体感としては20時過ぎると真夜中のような雰囲気。
まあ、この何もなさがいいんですけどね。
是非、海水浴・登山でもしに来てください?魚介・ジビエも美味いです。

なんだかんだ働ける

私は海沿いの田舎出身です。進学で家を離れ、県外で就職した量産型Uターン者です。
学生の頃から特に家を出たかったわけでもなく、かなり地元に愛着はありましたし、長期休みごとに帰省していました。
愛犬と散歩する海岸線を愛していましたし、”何もない”地元が快適だと感じていました。
ただ漠然と、この街で働くことはないだろう。と思っていました。

中学生の私は、というか時代的にも働き方は今ほど多様ではなかったこともあり、会社員又は公務員として働くのが現実的でした。
知識がない時代にしろ、働くことへの不安を感じる場所であったことは間違いないと思います。

やはり、地方出身者は地元就職への不安を感じるのではないでしょうか?

地元に限ったことですが、移住者が増えた現在ではカフェを経営されている方や、夏季シーズンのみ海に関わる仕事をされる等、選択肢が多くなっているように感じられます。もちろん会社員として働くことも可能で、鳥取市内の企業で働くことが多いです。なんとかなる、と思ってください。
地元はかつての別荘・民宿が見直され多少は”改善された”地域であるために、完全に衰退の一途をたどっている過疎地域ではないことはご理解ください。

交通の便は期待しない

ご存じのとおり、新幹線の恩恵を受けることができない山陰地方から他県への移動は時間がかかります。
幸い関西には列車1本で行くことができますが、それでも東西南北どこへ行くにも時間はかかります。
ビジネスで公共交通機関を利用される方は辛いでしょう。

生活圏内の移動は、列車は1時間に1本(ない場合もあり)、バスも一応ありますが、完全に車社会です。

近年はバイパス道路等が整備され、改善されていますが、まだまだ過渡期。

海岸沿いや山のドライブはなかなかエキサイティングだと思います。

私は子育て経験がないので多くはわかりませんが、鳥取県の子育て支援制度は充実しているようです。
しかし、子育てする方が得だ!と思わせてくれるまでには至っていないようです。鳥取県に限った話ではありませんが。
今回は長くなりますので、支援についての話は割愛させていただきます。

2020年にUターン・2年経過

現状報告

当初実家のある街に引っ越そうと考えていましたが、条件にあう物件がなく鳥取市内に収まりました。
私は全く知らない土地への移住者ではないため、鳥取市内はかなり便利に暮らせます。

  • 実家まで車で1時間以内
  • 賃貸で2人暮らし
  • 在宅ワーク兼アルバイト
  • 車なし(パートナーが所有)
  • 徒歩圏内に生活利便施設あり

こう見るとなかなか好条件。ちなみに、生活費は丼勘定折半ですのでよく分かりません。笑

休日は車で近隣の町や県外へ遊びに行くことも多いです。

移住して変化したこと

  1. 働き方・時間:毎日仕事しているわけではないので、趣味の時間が増え、よって知識が増えた?
  2. お金:収入は減りました。家にいるので服や化粧品への物欲が減少し、厳選できるようになった。貧乏だが豊かな暮らし。
  3. 食事:一人暮らしの頃よりは自炊するようになった。粗食になった。
  4. 健康:散歩、ランニング、登山等アクティビティを積極的に行うようになった。ランニングはなかなか継続しない
  5. キャンプに行かなくなった

鳥取県は、九州等のキャンプ大国と比べると魅力的なキャンプ場が少ないです。あと一緒に行ける友達が近くにいないんですよね…

今後の展望

現状では在宅ワーク兼アルバイトを行なっていますが、田舎でできる限り快適に生きていけるよう、ビジネスを模索中です。

エアビー、ゲストハウスやカフェ等に憧れた時期もありますが、いつも人がいる状況に耐えられる性格ではない。向いてない、と判断しました。週に数日程度の運用でどうにかなる形態が望ましいのですが…

また、ペット可の賃貸物件が少ないことも悩みどころです。
もう数年はペットロスを拗らせているため、将来わんこちゃんを迎えるためにも、家は欲しいところです。

田舎移住はアリなのか?

個人的な意見として、移住はまだまだアリだと思います!

一方で田舎における問題点は、這い上がれば抜け出せる状況ではないと考えます。ぽっかり空いた落とし穴というよりは、隕石が落ちたクレーターでしょうか?

上手く言えませんが、穴の中でより快適に生きるすべを模索する。そんな気がします。

一個人が考えるべきは、どう生き残るか。

  • 目的を明確化しておく
  • 防衛策を立てておく

私は勢いで移住してしまった側の人間なので、自身への注意喚起としての意味も込めて本記事を作成しました。

責任のない自由は自分勝手、なんて言いますが、自分で選んだ自由に責任を持って能動的に快適に暮らしていくことが必要なのかもしれません。

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